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3年間にわたる新型コロナパンデミックがようやく終息に向かい、まだ感染の小さな波は見られるものの、コロナ禍で制限されていた社会活動、経済活動が戻ってまいりました。糧食研究会でも、2023年7月の研究報告会が4年前と同じような形で実施でき、参加者の間のマスク越しではない交流が復活したことは嬉しいことでした。一方で、オンラインによる意見交換が普通のことになった今、Web会議や講演会は普通のこととして当会活動の中でも定着していくと思われます。
コロナパンデミックからは一応解放されましたが、急速な気候変動、国家間の対決がもたらした戦争状態の長期化、国際的秩序の瓦解などが、食の世界にも想定以上の悪影響を及ぼしています。豊かな食料素材やエネルギーが入手できることを前提に、高価な嗜好品や健康食品などが幅を利かせてきた我が国の食の世界においても、世界的な食糧資源の不足、エネルギーの価格高騰など、
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会長 清水 誠 |
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食の安全保障(Food security)を揺るがす事態に対応した新しい取り組みが必要になっています。未利用食資源の探索と利用、環境に配慮した持続可能な農産物・畜産物生産、災害時の食への備え、先端技術による革新的食料生産システムなど、これまでとは違うベクトルを持った食の課題に関する研究・開発が益々重要になってきていることは否定できません。
そもそも、糧食研究会が創設された20世紀初頭における食の課題は、「食糧不足や栄養失調から脱出するための技術の開発」でした。そして100年余の時間がたち、現在の我々は、内容こそ違え、また同じような食の課題に直面しようとしています。かつての糧食研究会が社会の危機に的確に対応して活動を展開していったように、現在の糧食研究会も、対応が待たれている多くの食の課題解決に向けて、その真価を発揮することが求められていると言えるでしょう。
第二次大戦で一旦活動を停止した本会は60年前に活動を再開し、明治乳業株式会社(現 株式会社 明治)のご支援の下、日本農芸化学会、日本医学会、日本工学会の先生方を中心とする学術団体として成長してきました。厳しい未来が予想されるこの地球上で、これからも人々が安心して健康に生きるための食を提供できるように、糧食研究会は、ここに集う研究者や技術者の知を結集して活動を継続していかなければなりません。 関係者皆様のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
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